今年の野球殿堂に選出された選手はいませんでした。必要な票数を獲得した候補者が出なかったためです。
MLBの野球殿堂は、全米野球記者協会BBWAAによる投票で決められます。
投票の対象となるのは、メジャーで10年以上プレイし、引退して5年以上経った選手で、BBWAAの審査会で選考を通過すると候補者として認められることになります。
BBWAAは投票資格のある記者1人につき、最大10人までの候補者に投票することができ、全体の75%以上の票を得た候補者は殿堂入り。5%以下の候補者は翌年の選考から外されてしまいます。それ以外の候補者は翌年以降の選考に残ることができますが、10年までの間に殿堂に必要な得票率を達成できなければ、やはり候補から外されることになります。狭き門ですねー。
こうなると、ケン・グリフィー・ジュニアKen Griffey Jr.の99%や、チッパー・ジョーンズChipper Jonesの97%なんか、ホント凄いことですよ!マリアノ・リベラMariano Riveraやトニー・ラルーサTony La Russaなんか100%ですからね。ホントに凄い。
実は、ノミニーとなりながらも10年が経過して選考から外された候補者には救済措置があります。一定期間あけたあとにベテランズコミュニティによる審査での殿堂入り機会があるのです。が、こちらの選考は本筋から逸れるため、今回は割愛します。
今回の投票では、有効票が401票だったそうで、75%ということは301票が必要でしたが、得票が最も多かった9年目のカート・シリング投手でも285票。同じく9年目のバリー・ボンズが次いで248票、ロジャー・クレメンスが247票という結果になりました。この他に9年目なのは68票獲得のサミー・ソーサです。
今回の選考の問題は、選ばれた候補者がいなかったことではありません。選出できなかった年は他に何回もあるのです。
得票率1位だったシリングは、近年、アンチムスリムな発言をしたり、トランスジェンダーを差別するような発言をして解説者をしていたESPNから解雇されたりと物議を醸していたのですが、それを非難されながらも候補者としては残っている、という状態でした。毎年の投票は12月31日に締め切られます。投票が終わった1月6日にそれは起こりました。議事堂での暴動です。そして、熱烈なトランプ支持者である彼は、暴動を支持するツイートをしたのです。これに反発した一部の投票者たちが投票の取り下げ、無効を申し立てました。
長い間非難され続けていたシリングが、それでも候補者として残っていたのは、「引退した後に」何をしたか言ったかを選考に持ち込まず、現役プレイヤーだったときの功績のみで判断されていたからです。それは、彼らが守ってきたものでもあったと思います。今回の投票で取り下げを申し立てた人たちは、矜持を天秤にかけて、それでも無効を願い出たのではないか、と私は感じています。
今回選出されなかったこと、取り下げを願い出た人がいたことに憤慨したシリングは、ラストイヤーである来年度のBBWAAによる選考自体を拒みました。殿堂には入りたいようで、後年、ベテランズコミュニティによる選出を望んでいます。
殿堂候補者たちの選考には、プレイの記録、能力、誠実さ、スポーツマンシップ、性格、チームへの貢献を考慮するとあります。政治信条がどうでも構いません。ただ、暴力やデマに加担することにcharacterやintegrityはあるのでしょうか。差別にはcharacterやintegrityはあるのでしょうか。Fameとはなんなのでしょう。
シリングの選考拒絶を受けたBBWAAは、「シリング氏は、野球殿堂の選考要件を満たしており、投票にとどまる必要があります。BBWAAは85年間、選考ルールを遵守しており、今後もそうし続けます。シリング氏の要求を拒否するように理事会に求めます」と、コメントしました。彼らの矜持は賛嘆すべきものです。